リッチー・ポートの記憶に残るジロ・デ・イタリアでのキャリア

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総合優勝候補として注目を集めたジロ・デ・イタリアで、リッチー・ポートの歴代の走りを振り返る。

☆記事

第19ステージの体調不良によるリタイアは、2022年ジロ・デ・イタリアでリッチー・ポートが求めていた13年間のグランツールレースの結末ではなかったかもしれないが、37歳の彼は先週、「ジロでは何が起こるかわからない。」と語っている。

オーストラリア人は、イタリアのグランツールの酸いも甘いも噛み分けている。2010年のデビュー戦ではマリア・ローザを着て白星を挙げ、翌年はアルベルト・コンタドールの総合優勝に貢献した。もっとも、その結果は取り消されてしまっているが。また、最初で最後の本格的なマリア・ローザを追うチャンスを得た2015年は、挑戦的な走りだったといっても過言ではないだろう。

パンク、ペナルティ、落車に見舞われたその災難な2015年大会の後、ようやくジロに復帰した今年まで、ツール・ド・フランスが彼の関心の大半を占めていた。それこそアシストとして、また2018年の第3ステージでの勝利や2020年の総合3位など、自らの結果を追い求め、最大の成功を手にしたグランツールだ。

しかし、イタリアはどういうわけか、彼の最後のグランツールにふさわしい場所であり、それを終わらせ、そして、すべてが始まった場所であるように思えた。最後のジロを走り終えた今、ポートにとってジロ・デ・イタリアが忘れられない、そして時には忘れたいレースとなった瞬間を振り返ってみよう。

☆2010年「グランツールデビュー」

★リザルト

★総合7位
★新人賞獲得
★3日間のマリア・ローザ着用

2010年のジロ・デ・イタリアにサクソバンクから出場したとき、ポートはワールドツアーチームのプロサイクリストとして1年目の数カ月を過ごしたばかりだった。

ポートは、すでにヨーロッパでその実力を発揮していた。2009年、オーストラリアを拠点とするコンチネンタルチーム、プラティスの一員としてイタリアでレースをしていたとき、彼はUCI2クラスのステージレースで2回のステージ優勝とワンデーレース優勝を果たしている。

その後、サクソバンクの一員としてジロを控えたツール・ド・ロマンディでステージ優勝と総合10位を獲得した。

しかし、この年のジロでは、チームの総合エースであるフランクやアンディ・シュレクがツール・ド・フランスに集中していたため、ポートとチームは総合への期待を控えめにしていた。

イタリアでのサクソバンクの目標は、同じオーストラリア人のバーデン・クックが狙うスプリントだった。

とはいえ、ポートが開幕戦のタイムトライアルで6位に入ったことで、その期待は一気に高まり始めた。1週目の安定した走りは、クックがリタイアした2週目にも引き継がれた。

第11ステージでは、雨の中、逃げに転じてマリア・ローザを獲得し、18.9kmのモンテグラッパの上りで脱落するまで、3日間その座を守った。

その後も、ポートはしっかりと耐え抜き、総合7位でフィニッシュし、新人賞ジャージを手に入れた

このパフォーマンスでポートは、5位でフィニッシュした同国人カデル・エヴァンスと上位を占めただけでなく、それまではしばしばエヴァンスのみが語られた、オーストラリア人の総合優勝候補の話題に加わることになった。

「彼はずっと隠れていたけれど、今や誰もが彼の名前と彼の能力を知っている」と、その時エヴァンスも語っていた。

☆2011年 「コンタドールのアシストとして」

★リザルト

★総合81位
★第21ステージ個人タイムトライアル3位

2010年にマリア・ローザを着用したポートは、2011年大会に出場したとき、再び総合の上位を狙えるという幻想を抱いていなかった。チームはピンクジャージの獲得に全力を注いでいたが、この年はオンロードでもオフロードでもアルベルト・コンタドールが主役だった。

コンタドールは、前年のツール・ド・フランスでのドーピング陽性反応についてスポーツ仲裁裁判所が審議している間、レースに出場していた。しかし、彼とサクソバンクは、第9ステージでマリア・ローザを獲得し、最後までその座を守り抜いた。

しかし、成績表の1位を維持することはできなかった。コンタドールは、2010年ツール・ド・フランスに関連するドーピング停止処分により、スポーツ仲裁裁判所(CAS)から正式にタイトルを剥奪されたからだ。

しかし、その間にポートが積み重ねた経験値だけは残った。コンタドールが成績表から消えたことで、ポルテはミラノでの最終タイムトライアル4位が3位となり、グランツール初の表彰台を手に入れたからである。

☆2015年「パンク、ペナルティ、そして落車」

★リザルト

★DNF

2015年のジロ・デ・イタリアは、5年前に鮮烈なデビューを飾ったポートが、その期待に応えるグランツールになるかのように思えた。

3大ツールのすべてに出場し、ステージ表彰台をより多く獲得し、7回のグランツールを経験し、オーストラリアのタイムトライアル王者のジャージを背負うようになった。

さらに重要なのは、誰かの成功のために働くのではなく、2012年にチームスカイに移籍したポートが、かつてのリーダー、コンタドールを倒すために強力なチームを編成していたことだ。

コンタドールから20秒差の総合3位でスタートしたジロだったが、第10ステージでタイヤがパンクし、初期の成功はあっけなく崩れ去った。残り7kmでパンクしたポートのタイムロスはわずか47秒だったが、その影響はステージ終了後に現れた。

ポートの苦境を目の当たりにしたグリーンエッジのサイモン・クラークが、仲間であるオーストラリア人を助けるためにホイールを譲ったのだ。しかし、この行為は結果的に高くつき、ポートは「他チームのライダーへの規定外のアシスト」によってさらに2分の減点となった。

その結果、ポートは総合12位に後退し、トップのコンタドールから3分9秒遅れとなった。

さらに第13ステージでは、タイムロスがカウントされない区間である3kmの横断幕を目前にして、ポートが落車で倒れた。

その差は5分05秒まで広がったが、この転倒の影響は、その後のステージではるかに大きなものとなった。傷だらけで包帯を巻いたポートは、通常得意とする第14ステージのタイムトライアルでさらにタイムを落とし、さらに山岳が続く第15ステージではトップ集団から27分以上遅れてゴールし、完全に総合優勝争いから脱落した。

この落車の影響は明らかで、2日目の休息日にポートがレース続行を断念したのも不思議ではなかった。

「土曜のタイムトライアルと昨日のステージで、膝と腰を強く打ってしまい、痛みが出てしまった。」

「僕はただ挑戦し続け、すべてを出し切りたかったんだけど、メディカルチームから続行しないようにと言われたんだ。」とポートは語っている。

ポートのジロ・デ・イタリアにおける最初で最後の総合優勝への挑戦は、こうして幕を閉じた。

☆2022年「1周回って」

★リザルト

★DNF
★チームメイト、リチャル・カラパスが総合2位に入賞

ポートが最後にジロ・デ・イタリアに出場してから7年が経過していた。ジロでの苦い経験以来、ポートはブエルタ・ア・エスパーニャに1回、ツール・ド・フランスに7回出場し、アシスト役とチームリーダーを兼任した。

2020年ツール・ド・フランスでは3位となり、念願のグランツール表彰台を獲得し、ここ数年はスーパーアシストとしてのキャリアに落ち着いていた。

キャリア最後のグランツールでもその役割を担い、山岳でリチャル・カラパスを支え、マリア・ローザを獲得するチームの一員になれることを望んでいた。しかし、その目標を阻むのは、もう一人のオーストラリア人であることは、彼には予想もつかなかったことだろう。

カラパスは、イネオス・グレナディアーズのためにジロ・デ・イタリアでの総合3連勝を達成すると期待され、断然の人気者としてレースに参加した。カラパスはモビスターに所属していた2019年にジロを優勝しており、勝利の能力は証明されていた。

さらに、経験豊富なポートと、山岳ステージの奥深くでカラパスに付き合う若きクライミングの才能を持つパヴェル・シヴァコフを含む強力なチームによって、優勝チームの一員として引退していくポートを止めることはほとんどできないように思われた。

最終週に向けて、ポートはリーダーのために身を粉にして働き、リーダーも主導権を握っているように見えた。

最終週前の2つの山岳ステージを前に、カラパスはマリア・ローザをキープ。ボーラ・ハンスグローエのジャイ・ヒンドレーとの差は思ったよりも狭かったが、最後のタイムトライアルで彼に有利になる可能性が高いため、さほど心配には及ばなかったようだ。

しかし、最後の山岳ステージを控えた第19ステージで、事態は少し狂い始めた。シヴァコフが脱落し、ポートの調子も悪く、登りで振り落とされ、走行中に吐いてしまったと報じられた。

ポートが望んでいたグランツールの結末ではなかったが、第19ステージでリタイアし、最後の山場を前にシヴァコフをカラパスの最後のアシストとして残さなければならなかった。

しかし、最後の山岳ステージの最後の1キロメートルの上り坂で、その計画は失敗に終わった。3秒のリードが1分25秒の差になり、わずか17.4kmのタイムトライアルで引き返すには、あまりにも大きすぎるタイム差だった。

ポートの存在があれば、この山で違いを生んだのだろうか?オーストラリア最高の総合ライダーがグランツールで最後のペダルを踏んだように、これによって別のライダーのキャリアが本格的に始動したのだ。

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